■いや、原作は好きなんだけどね。
「ああっ女神さまっ」という媒体は、原作マンガが随分なロングランを誇る作品であるのにも関わらず、今まで不思議なほどにゲーム化をされていない作品でもありました。 出たのはPC98版と、その98版の移植であるPC-FX版のみ。確かスーファミでも出るような話があったような気がするのですが、その後ファミ通の販売スケジュールからも姿を消したとか何とか。
で、その数少ないゲーム化作品でも、「出たのは嬉しいけど絵が似てねえ」という、マンガ原作をゲーム化した作品に対する評価として「あっちゃいけない感想」がひしめいていたような記憶があります。PC-FX版に対する感想もそんな感じ。
「藤島康介が原画を担当したソフト」となると、テイルズ・オブ・ファンタジアだのサクラ大戦だのと「結構な話題と結構なヒット」を記録したソフトが残っているのですが、それが「藤島康介作品のソフト」になると、驚くほど評価の低い、もしくは発売すらされない物ばかりになりますな。PS版「逮捕しちゃうぞ」も気が付いたら埋もれておりました。
でも、そんな「女神さまっのゲーム化を望むファン」にとって、正に福音とも呼べるようなニュース〜セガがアーケードで女神さまっのクイズゲームを出す〜が飛び込んできました。セガといえばサクラ大戦。藤島康介とのパイプも相当に深いし、何よりセガのキャラゲーは当たりが多いからクオリティに関する心配も無い。オマケにオリジナルの新キャラも出るとか。
そして何より、NAOMI基盤のリリースだからすぐにドリキャスでも発売される…
アフタヌーンにリリースの話が載ったときのファンの衝撃ってのは相当なもので、その後毎月発表される新情報を、みんな固唾を飲んで見守っていました。「3Dで表現されるベルダンディー」という今考えてみればえらく不吉な情報も、ソフト発売というフィルターを通過することはそうそう無く、表面的にはほぼ全員が楽しみムードで発売を迎えたような気もします。
この時、ファン達には見えていなかったのです。
いや、あえて現実を見ることを拒んだのかもしれません。
このソフトを開発したワウ・エンターテインメントと言う会社が、「ゲーム史上一番助け出したくないヒロイン」と(別の意味で)誉れ高いダイナマイト刑事の大統領の娘を作り出した会社であること。そして、セガは確かにレイアースだのサクラだのとキャラゲーに当たりが多いけど、その実セガのキャラ(版権)ゲーの中でひときわ輝いているのが「ああ播磨灘」だと言う事実を。
■こ…これが蛍一か!これが蛍一か!
まー、とにかくビックリするのが3Dでモデリングされたキャラでしょう。
元々非常に線の細い藤島キャラをポリゴンにすることが冒険だったということを差し引いたとしても、この酷さは一体どーいうことなのか?サクッと言うとデスクリムゾン2以下です。蛍一なんか、じっと見てると次第にパックマンにも見えてくる始末。
よしんばこのモデリング自体に目を潰れる寛大な心が存在したとしても、「キャラの表情が一種類しか無い」という事実の前にはただただ悶絶するばかり。画面左下に出てくる2Dキャラの顔グラフィックの出来が非常に良いため(しかもこっちはセリフごとに表情がコロコロ変わる理想的なカタチ)、ゲーム中大半を占める3Dキャラの惨めさが必要以上に引き立っています。
この結果、
プレーヤーにとってのゲーム画面は「メッセージウインドウより下」のみ
ということになります。
…試しに、ゲーセンに行ってプレーしている人を見てみて下さい。
顔は画面に向かっているけど、視線が妙に下に寄ってるはずです。
■俺は雑学マニアぢゃねぇー!
クイズゲームと言うくらいなのだから、クイズ部分に焦点を当てるのはある意味当然。…ところが、このクイズ部分が「至って普通…以上に難しい知識を要求してくるクイズ」であるため、ゲーセンなんかではその要求レベルに耐えられずに挫折していた例が多く見られたようです。とにかく、普通に出てくる問題のレベルが無用に高いんですよ。
大方クイズ研究会辺りに全権を委任してしまった結果なんでしょうが、一介の女神さまっファンに、井沢元彦のデビュー作なんてマイナーな問題が解けるんでしょうかね?
キャラゲーに肝心な「元ネタ系クイズ」が少ないのもアレ。
ジャンルセレクトのアイテムを使わない限り、普通の展開で女神さまっ系はおろか他の(つってもほぼ「逮捕」のみ)藤島作品の問題に出会うことは無いです。
このソフトを買うユーザー層が全く見えてなかったんでしょうか?カルトQぢゃねえんだよ。
■いやあの…うん(ぽっ)。
今回DC版では、当たり前のようにイベント時のフルボイス化が行われています。
…えー、この部分だけは素直に「好き」と言いますわ。かく言う俺は久川綾好き。どんなに上記の部分に文句を言おうと、俺に久川綾フィルターがかかっている限りは、メッセージウインドウと声だけでどうでも良くなってしまうと言う事実があります。
くっはー!久川綾サイコー!
■夢も希望もあったもんじゃねえ
ちょっとでもキャラゲーの文法に対する認識があったのかどうかは知りませんが、このゲームでは、クイズの合間にちょっとした恋愛アドベンチャー気分が味わえるような設計になっています。クイズを出題する女神を選べるようになっており、同じ女神を選びつづけることによってメッセージが変わっていくという感じ。一応、アイテム出現率が上がると言う特典もありますが、んな事はこの際どうでもいいですな。実際、「スクルドが蛍一に対して頬を赤らめる」っていうシチュエーションにはグッと来ました。
ただ、このシナリオ部分には唯一絶対の欠点が存在します。それは、
「どんなにいい感じになろうと蛍一⇔ベルダンディーの関係は崩れない」
というもの。どんなにスクルドに入れ込んでも結果として報われることは無いんですよ。
これは、例えるならば「どんなに頑張っても天下を取れない信長の野望」みたいなもので、そんなんだったら無い方が良いよとも思えます。他の女神が添え物であると考えられるならどうでもいいんでしょうけどね。
ちなみに、当初「ゲームだけのオリジナル」とされていた新キャラのリンドさんですが、その後原作にも登場。主役を奪わん勢いでもりもりと活躍されておりました。
俺の青春を返せ。
■そもそも人選ミス?
今回、アーケードからDCに移植する際に当然付くべきオマケ要素がゲーム内に一切存在しないのが気にかかりました。シナリオ部分を追従できるモードとかオリジナルのシナリオとか、付加できる要素はどこにでもあったはずなんですが。
せめて3Dキャラの表情ぐらい増やせよ。限定版のクッション発注する時間でさ。
これはセガの移植物に常に言われていることではあるのですが、とにかくオマケ要素をつけるのが絶望的にヘタですね。ゲーム本編に絶対的な自信があるんだか知らんのですが、この部分に関してナムコなり何なりの他社を見本にしようという気概がまるで見当たりません。
特に、女神さまっという明らかなキャラゲーに対して、それに付随する「キャラゲーなりのエッセンス」という要素を根本から理解していないような節も見受けられますね。以前PS版さっくらちゃんの時も言いましたが、「ゲームにキャラを乗っけただけ」ってのは手抜き以外の何物でもないんじゃないでしょうか?
ワウエンターテインメントの製作陣には、女神さまっの読者が存在しないんでしょうかね?
■過ちを二度と以下略
セガが分社化して「製作環境がスリム化→効率アップ」を謳い文句にする所も多いですけど、それ以前に家庭用チームと業務用チームの要求ラインの質の違いを理解できぬままに今回のような失敗作を生み出すようなバカな事は、今後二度とやって頂きたくないです。
アーケード的な作品作りを追求した結果、キャラゲーとして大事な要素を全て殺してしまっている。一体、誰に向けて作ったソフトだったんでしょうか?
仕事だけのキャラゲーなんて作らない方が良いです。
それならダイナマイト刑事3でもソンビリベンジ2でも作ってたらいい。
ダメなゲームを作るだけならまだしも、それをオマケつきの限定版で覆い隠そうとする根性…ハッキリ言って、ダメチームの作ったダメゲームとしか言えませんな。
原作のファンとして、このゲームを許す気にはちょっとなれません。
ま、ドリマガの読者レースがその結果を素直に現わしているというか。
あ、クッションの出来は良いですよ。
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